本研究は、高温処理で発現する温度感受性のプロモーターを利用して外来遺伝子を植物体中で発現させ、植物の二次代謝の制御を行なおうとするものである。タバコ野生種(Nicotiaca plumbaginifolia)をモデル植物に、またトウガラシ(Capsicum frutescens)を実用的な植物の代表として実験材料に取り上げた。 今年度は、代表的な二次代謝経路であるフェニルプロパノイド経路の第一段階であるフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)のcDNA(パセリ由来)に、シロイヌナズナの熱ショックタンパク質のプロモーターを結合させ、Agrobacterium rhizogenesを用いてタバコ、トウガラシに感染させて毛状根など形質転換体を取得した。対照としてはレポーター遺伝子であるβ-グルクロニダーゼ遺伝子を用いたものを導入した。 得られた毛状根の中から目的の温度感受性プロモーターを結合したキメラ遺伝子が導入された形質転換体を選抜するために、それぞれ導入遺伝子の一部をプライマーとしたPCRによるDNA増幅で確認した。その結果、タバコではGUS遺伝子の導入された3系統とPAL遺伝子の導入された2系統、トウガラシではGUS遺伝子の導入された2系統の目的の毛状根が得られた。 タバコについてGUS染色を標識として高温処理による導入遺伝子の発現を検討したところ、毛状根でも温度感受性プロモーターが外性の温度調節によって発現することが明らかになった。このためこれらのGUS活性を標識として導入遺伝子を発現せるための温度調節の最適条件を検討したところ、毛状根の系統によってばらつきがあるものの、38-42℃、2時間の処理で顕著なGUS活性の誘導が観察され、42℃で最高の誘導活性が見られた。現在GUS誘導活性について安定性など詳細を検討中である。
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