研究概要 |
生化学的・遺伝学的知見が少なく、当該サイクルを用いた物質生産の是非を論じることが出来なかった還元的TCAサイクルに関して、特に本サイクルの鍵酵素反応(Pyruvate : ferredoxin oxidoreductase(POR),2-Oxoglutarate : ferredoxin oxidoreductase(OGOR))、に焦点を絞り、主として上記反応を生化学的・遺伝学的に解明することを通して、還元的TCAサイクルを用いた炭酸ガスからの物質生産に関する基礎的知見を得ることを目的とした。 本研究で得られた具体的な結果としては以下が挙げられる。 研究材料として、還元的TCAサイクルの機能性が証明されており、生化学的にかなりの知見が蓄積している好熱性水素細菌Hydrogenobacter thermophilusを用い、(1)既に遺伝子が得られているPORの大腸菌における機能的発現を行い、それまでには4サブユニット型であると言われていたPORが実際には5サブユニット型であることを明らかにした。 (2)OGORの遺伝子クローニング、シーケンシングを行い、蛋白質的に得られていたOGORの遺伝子取得に成功すると共に、当該遺伝子上流逆向きにもう1セットのOGOR様遺伝子が存在することを明らかにした。さらに、OGORに関しては大腸菌における機能的発現にも成功した。 (3)OGORのそれぞれの遺伝子が好気・嫌気条件により制御されている可能性を示唆した。 (4)実際の培養系及び自然界でそれぞれの遺伝子がどの程度発現しているのかを明らかにするために、RT-PCRの実験系のセットアップを行ったが、研究期間内では有意な結果を得ることは出来なかった。
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