本年度は、いくつかのセルラーゼ、キシラナーゼのプロモータ領域を用いたアフィニティクロマトグラフィを試みたが目的とするようなDNA結合蛋白質を精製するに至らなかった。キシラナーゼのプロモータ配列を得る目的で、Clostridiumのキシラナーゼ遺伝子をクローニングした。一方、Bacillus属などで見つかっているカタボライト調節蛋白質(CcpA)の配列をもとにプライマー設計をして、PCR法による遺伝子の増幅を試みた。この結果、嫌気性Clostridiumの染色体DNAを鋳型とした時に増幅する断片を得ることができた。これらの塩基配列を決定したところ、CcpAのホモローグをコードしている遺伝子の一部であることが判明した。これらをもとにサザンハイブリダイゼーションとコロニーハイブリゼーションにより、遺伝子全体を含むDNA断片をクローン化した。これらは、そのアミノ酸配列の相同性から、Bacillus属のCcpAのホモローグであり、ヘリックスーターン-へリックスのDNA結合モチーフを含むレギュレータであると推定した。この遺伝子にBacillus属のCcpA遺伝子のプロモータを連結し、CcpA陰性のB.subtilisに形質転換した。しかしこの遺伝子はCcpAを相補しなかった。このことは、このCcpAのホモローグが、B.subtilisのCcpAとは機能的に異なることを示唆している。この蛋白質とヒスチジンタグとの融合蛋白質を発現するベクターを構築し、大腸菌での大量発現を試み、Ni-NTAクロマトグラフィとResource-Qイオン交換クロマトグラフィにより、大量に精製することができた。今後は、この精製蛋白質をつかってDNAの結合領域の特定を急ぎたい。本年度購入した「低圧クロマトグラフィーシステム」は、大腸菌で発現した蛋白質の精製に使用し、十分な威力を発揮した。
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