本研究は、動物性食品原料から生ずる廃棄物の中で、環境保全の立場から問題となっている魚腸骨及びと畜血液を微生物や酵素で有用資源へと変換し、それらの有効利用を主な目的としている。まず、魚油を唯一の炭素源として生育する微生物を検索し、酵母Candida guilliemondiiF0726A及びその他多数の株を見いだした。次に、酵母菌体内のDHAとタンパク質含量を考慮して、最適培養条件を検討した。菌体タンパク質は、25℃、72時間培養で、また菌体脂質は30℃、24時間で最も多く生産され、それぞれ魚油1g当たり0.34gおよび0.45gであった。菌体タンパク質のアミノ酸組成分析から、グルタミン酸が構成アミノ酸の25%を占めることが判明した。また、リジンの占める割合は9.7%で、酵母Saccharomyces属の菌体タンパク質に比べて高い値を示した。一方、本菌によるDHAの回収率は魚油から40%を示し、本菌がDHAの蓄積濃縮には有用であることが判明した。 と畜血液の有効利用については、まず血液の主要成分であるヘモグロビンを用いて、加水分解物の調製条件を検討した。ヘモグロビンにペプシン、パパイン、キモトリプシン、アクチナーゼを37℃で作用させて分解速度を調べた結果、ペプシンがペプチド調製に最も優れていることが明らかとなった。調製したペプチドの抗酸化作用を、リノレン酸を用いた酸化モデル系においてロダン鉄法とTBA法で測定した。ヘモグロビンは抗酸化作用を持っていなかったが、ペプチド画分は、抗酸化作用を有していた。従って、ヘモグロビンの分解物は新機能性素材として有用であることが示唆された。
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