研究概要 |
動物性食品原料から生ずる魚腸骨とと畜血液を対象として、環境保全の立場から微生物や生物由来の酵素で有用資源へと変換し、それらの有効利用を検討することを目的とした。 魚油を唯一の炭素源として生育する微生物を検索し、多くの有用酵母を見出した。平成12年度にはCandida属のF0726A株が、生体に有用な高度不飽和脂肪酸(イコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA))を蓄積することを明らかにした。また、その蓄積条件を詳細に解析した。平成13年度には、Geotrichum属のF0347-2株が同様の性質を有することを明らかにすると同時に、DHAの蓄積条件を解析した。これらの微生物は、魚腸骨から有用な高度不飽和脂肪酸を濃縮することに利用できる可能性が示唆された。 と畜血液の有効利用については、平成12年度に血液の主要成分であるヘモグロビンの分解物が、抗酸化作用と血圧上昇抑制作用を有することを見出した。平成13年度には、その血圧上昇抑制作用を詳細に調べた結果、ヘモグロビン分解物投与により高血圧自然発症ラット(SHR)の血圧上昇が抑制されることが判明した。また、その分解物から血圧上昇抑制に関わるペプチドを単離し、構造解析を行った。TPAVH, HLDDDLK, VAAAL, VDPVMF, VVYPWの5種類のペプチドが同定された。さらに、これらのペプチドを合成し、その有効性を確認した。このように、と畜血液成分は新規機能性食品素材として有効利用される可能性が示唆された。
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