平成13年度は、当初の計画の通り、前年度の研究をベースにして、ライプニッツ哲学の形成における懐疑主義の役割をめぐる考察を深め、その成果を第7回国際ライプニッツ学会で発表した。発表論文の趣旨は、ライプニッツ哲学は、その核心部について反懐疑主義の論証として解釈できるというものであるが、この点を論文では若いライプニッツによる近世懐疑主義との対決と晩年の古代ピュロニズム反駁の試みとを、それぞれ観念から表現の哲学への転換、および現象に関する仮説を含む真理の根拠づけの可能性をめぐる実在論的含意をもつパースペクティヴイズムとプラグマティズムとして整理した後で、このような反懐疑主義の諸論証の論点が、内属原理をベースにした「論理主義」的解釈では十分に解明できない点をライプニッツ自身の「モナドロジー」などでの同一律と並ぶ包括的な「適合性」原理への言及から裏付けた。こうした視点からライプニッツの認識論の基本性格を歴史的には二つの形態を取る懐疑主義を批判的に摂取しつつも、構成主義的な意味合いをもつ「発見法」と連動する実在論として示した。また同時に、この反懐疑主義的論証としてのライプニッツ哲学という観点は、認識論にとどまらず、スピノザ哲学との関係で焦点となる自由論についても妥当することを別の論文で示した。さらにこの観点から、ライプニッツの「モナドロジー」を心と自己の存在に関する懐疑主義反駁として読解することができる点も、14年3月に開催される「一七世紀合理主義と真理」と題された日仏哲学会の企画で「モナ下ロジックな心の哲学の可能性」として発表する予定である。
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