1年目にあたる本年度は、研究計画通り、イブン・アラビー学派全体を概観するとともに、人名リスト・文献リストなどの作成を行った。その際、東南アジア・南アジア・中国など、従来イスラーム思想研究の枠組みでは十分に注意が払われてこなかった地域に特に焦点をあてた。そのため、文献リストは、、ヨーロッパ諸語の研究のみならず、中東・中央アジアで用いられてきたアラビア語・ペルシア語・トルコ語(およびテュルク系諸語)、南アジアで用いられてきたウルドゥー語、東南アジアのマレー語、東アジアの漢語による、一次資料および二次資料を含むものとなった。実際にこれらを研究に用いるために、ジャウィ(アラビア文字表記のマレー語)および漢籍については、別プロジェクトの研究会に継続的に参加して、読解力向上を図った。 とはいえ、同学派の広大なイスラーム世界の全域への広がり、用いられる言語の多様性を考えれば、一人の研究者が研究し尽くせるものではない。そのため、国内のみならず、国際的な共同研究を行う必要がある。今年度はその先鞭をつけるべく、海外から7名、国内から1名の発表者を招いて、国際会議"Ibn 'Arabi and the Islamic World-Spread and Assimilation"を主催した(2001年1月20日[於京都市国際交流会館]、1月22、23日[於芝蘭会館])。同会議のプログラム等は、所属部局のホームページに公開している。本年度の研究の成果は、この国際会議の基調講演のために執筆した英文論文として公表した。なお、同会議の発表原稿をもととした英文論文集を編集し、公刊することを企画している。
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