研究課題/領域番号 |
12871005
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研究種目 |
萌芽的研究
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
宮坂 道夫 新潟大学, 医学部, 講師 (30282619)
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研究分担者 |
佐山 光子 新潟大学, 医学部, 教授 (50149184)
櫻井 浩治 新潟大学, 医学部, 教授 (80018712)
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キーワード | 生命倫理 / 物語論 / 物語 / 方法論 / 医療倫理 / 臨床倫理 |
研究概要 |
本年度の研究計画は、「研究計画調書」に記したように、「文献研究を中心とする準備段階」であり、文献収集と、物語論の定義、方法論としての位置づけの整理が主な目的であった。これまでの検討では、以下の二点が明らかになった。 まず第一に、生命倫理学における物語論は、主として臨床倫理と倫理教育の領域において、「当事者の状況」をより詳細に把握するための論法として多く用いられていた。しかし、これらの方法論を哲学的に基礎付けた文献は少なく、物語論が明確な定義づけを与えられないままに生命倫理に「応用」されているのではないかと疑われた。この意味で注目されたのが、マッキニーによる、カトリック倫理思想史における決疑論と物語倫理(narrative ethics)との対比である。マッキニーは、物語倫理の起源が決疑論と同じで、アリストテレスの衡平(エピエイケイア)にあると見なす。その方法として、「決疑論」が原則に立ち返りながら事例に含まれるジレンマの解決を図るのに対し、物語倫理は人が人生の物語を通して道徳性を理解する点に注目する。これは、アメリカの生命倫理学においてビーチャムらの「四原理」に対して、ジョンセンらが臨床倫理の方法として決疑論を持ち出し、さらに今日、当事者の人生の状況への理解を通じて意思決定に結びつけるという物語論的な方法が注目されていることとよく似ている。 その一方で、生命倫理に関わる公共政策の決定に際して、物語論的なアプローチを論じた文献も散見された。社会的意思決定の場において、物語論的な状況把握では代表性が保証されず、不公正に結びつくとする論者がある一方で、先端医療の問題に関しては、患者など医療技術の受益者となる当事者の状況に対する想像力を獲得するために、物語論的な方法が不可欠であるとの議論もある。これは、正義論との関連性において、今後注目してゆくべき論点であると考えられた。
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