本年度は様々なメディア論、並びにオートポイエーシス理論と、それを取り入れたニコラス・ルーマンの社会システム理論等を参考にしながら、現代美術の調査研究を進めた。その際、インター・コミュニケーション・センター(新宿、東京)、水戸芸術館、広島市現代美術館、あるいはクレーラー=ミュラー美術館(オランダ)、現代美術センター(ワルシャワ、ボー・ランド)、ブンケル・シュトゥーキ(クラクフ、ポーランド)、ウィーン近代美術館(オーストリア)にある資料も活用し、作品調査を行った。 多用な価値観が併存し、高度に情報化された現代において、美術作品の果たす役割はますます大きくなっていると思われる。美術作品は取り巻く環境に対して攪乱作用を及ぼしつつ、自らも変化、生成してゆく有機体に例えることが可能であろう。従来のメディアに留まらず、各種の分野を横断する形で作品制作が活発に行われており、それらの作品を的確に評価し位置づけるための言説を確立することが急がれる。本研究の成果は、来年度以降当館で企画実施予定の展覧会にも反映させる予定である。
|