研究概要 |
本研究の目標は,類知覚的側面と情動的側面の2つを含むイメージ体験過程の構造と,そのような構造をもたらすメカニズ明らかにし,イメージ処理過程に関する総合的なモデルを構築することである。そこで平成12年度は,イメージ体験におけるこれら2つの側面間の関係に関する仮説を得るために質問紙調査を行い,以下のような結果を得た。 まず,研究Iの第1分析では,ポジティブ,ネガティブ各情動喚起場面におけるイメージ体験は,それぞれの情動方向の違いによって因子構造に質的差異がみられることが明らかになった。そこで,各情動喚起場面におけるイメージ体験構造を個別に検討した結果,どちらの情動喚起場面においても共通して,イメージの類知覚的側面に関する下位構造,情動的側面に関する下位構造,およびイメージ現実感に関する下位構造の三者が含まれていることが明らかになった。しかし,ポジティブ情動喚起場面とネガティブ情動喚起場面を比較すると,後者では,イメージの類知覚的側面がより分化しているが,情動的側面にはそのような分化した構造はみられなかった。 研究IIとIIIではイメージ体験構造をさらに詳細に検討するため,イメージ体験の全体的な現実感,類知覚的な現実感,情動的な現実感に関する項目を追加した質問紙を用いた調査が行われた。分析の結果,ポジティブ,ネガティブ・イメージとも,イメージ体験の現実感は類知覚的側面と情動的側面によって規定されていること,および前者では類知覚的側面も情動的側面もさらに下位の構造に分化しているが,後者では類知覚的側面のみが下位構造に分化していることが明らかなった。
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