研究概要 |
本研究の目標は,イメージ体験過程の構造と,そのような構造をもたらすメカニズムを明らかにし,イメージ処理過程に関する総合的なモデルを構築することである。平成12年度の調査研究によって,イメージ体験では類知覚的側面と情動的側面の間に,相互作用があるらしいことが示唆された。そこで,この結果に基づき,平成13年度の研究では両情報の同時存在性,および両者の関係性について実験的に検討し,以下のよう点を明らかにした。 1 プライミングの手法を用いることで,イメージ体験における類知覚的情報と情動的情報の同時存在性について検討した。その結果,プライム試行においてイメージの類知覚的側面のみを喚起するような実験操作をおこなっても,情動的側面も随伴して喚起され,後続のプローブ試行における情動的判断に影響を与えることが示唆された。このことから,少なくとも両側面はイメージ体験において同時に存在していることが実証的に示された。 2 感情的なネガティブ・プライミング・パラダイムを用いて,イメージ体験における類知覚的情報と情動的情報の同時存在性についてさらに検討した。その結果,プライム試行でイメージした対象と,後続のプローブ試行での情動的判断の情動方向が一致した場合には,反応が促進されるポジティブ・プライミングが見られた。反応が遅延されるネガティブ・プライミングは生起せず,反応が促進されるポジティブ・プライミングが見られたことから,本実験におけるプライムとプローブの連続提示は,同一刺激側面の繰り返しとして機能したことが示唆された。このことより,イメージ体験における両側面の結びつきは,非常に緊密なものであることが実証的に示された。
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