研究概要 |
幻聴体験をはかる質問紙法(ヒアリングボイス質問紙)を作成し,その信頼性と妥当性を確かめた。次いで,「侵入思考を感じたときに,それを誤って帰属するためにヒアリングボイスが生じる」というMorrisonら(2000)の仮説について検討した。素因-ストレス型の縦断調査(パネル調査)をおこない,因果関係を推論できる準実験のパラダイムを用いた。健常者を対象として,2週間の間をおいて2回の調査をおこなった。第1回目の調査では,ヒアリングボイス質問紙と,幻覚への素因(思考統制方略質問紙,メタ認知的信念質問紙,幻覚への態度質問紙)に回答させた。第2回目の調査では,ヒアリングボイス質問紙と,調査間におこった侵入思考の質問紙(苦痛思考質問紙)を回答させた。第2回目のヒアリングボイス質問紙得点を標的変数として,階層的重回帰分析をおこなった。つまり,第1回目と2回目のヒアリングボイス得点の変化を用いて,素因とストレスの交互作用効果が有意であるかをみた。その結果,幻覚への態度質問紙を素因とした場合に交互作用が有意であった。すなわち,幻覚への許容的態度が高い被験者は,侵入思考を多く体験すると,ヒアリングボイスを多く体験することがわかった。これは準実験的な方法であり,単なる相関関係ではなく,幻覚への態度がヒアリングボイス体験に及ぽす因果関係を確かめることができた点で意義が高い。
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