今回の研究で明らかになりつつあるのは、歌詞とメロディは切り離せないということであり、人々がコラージュ療法や箱庭療法のように自身の「創作」としてのミュージック・テープを作りその全体をたのしむことである。また、これを気楽に持ち運んでいつでも聞くことができる時代となり、音楽仲間でその内容をコピーして交換することは貴重な交流体験であることが知られるようになった。そこで基礎データとして、人々が好きな音楽を、無数にある商業音楽から選び出し、選ばれた楽曲の性質や傾向を調べようと考えた。つまり歌詞研究は、その後の課題であると位置付けを改めざるをえなかった。対象は、「癒し」と「人生」の専門家である、精神科医、クリニカル・サイコロジスト、ソーシャル・ワーカーらである。これまでの人生で「癒された」と感じた曲、あるいはその種の体験だったと考えられる曲の曲名と演奏者名を20曲思いつくまま挙げて回答紙を私共に送り返してもらっている。現在約1000通配布して、35の回答を得ているが、最終的には全部で2500通配布する予定であり、締め切りは本年末に設定しているので、100通以上の回答を得ることになると考えている。すでに入力を開始しているが、あまりに偏りがなく、広く散らばっており、傾向が語れる状態ではない。ただし、多くの反応が、この選曲そのものが「ヒーリング」や「癒し」であると発言しているということは特記すべきことであろう。
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