動物介在療法における治療理論の精緻化とその臨床場面への適用

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12871020
• 研究種目: 萌芽的研究
• 研究機関: 北海道医療大学
• 研究代表者: 岩本 隆茂 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (10000605)
• 研究分担者: 千丈 雅徳 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (40179362) ; 斎藤 恵一 北海道医療大学, 看護福祉学部, 助手 (50292131) ; 森 伸幸 北海道医療大学, 看護福祉学部, 講師 (10295917)
• キーワード: 動物(介在)療法 / 生理心理学的指標 / NK細胞 / ストレス / 代替療法 / 音楽療法

研究概要

本年度は初年度であったので、第1段階として現時点までのわが国における動物介在療法における研究方法・臨床での実施などについてのノウハウに関する資料収集に務めた。また実際に動物介在療法研究を行っている研究者についても、直接連絡を取り、できるだけ面接することによって、多くの直接的な情報を収集するようにと、努力した。
それらの報告の中でも、動物介在療法を実施したさいに、生理心理学的結果として、高齢者のみならず年齢対照条件として設けられていた健常大学生群においても、動物の存在がストレス低下をもたらすと報告されていた。その証拠としては、体表温度の上昇、血中のNK(ナチュラル・キラー)細胞の増加や唾液中におけるγグロブリンの低下の見られることなどが述べられていた。。
われわれとしては、これらの資料の詳細な分析結果に基づき、健常な大学院生に愛玩犬の動画を見せる群、岩本の教員研究費で購入した高級玩具の「AIBO II」を見せる群、なにも見せない群などを設け、ストレス負荷の前後での各種生理心理学的な指標の変化をモニタする実験に着手したところである。この結果は現在まだ未分析ではあるが、多くの興味深いデータが得られつつあり、次年度における本格的な研究結果が期待される。
本研究の研究代表者・岩本隆茂の見解によれば、「動物介在療法」は、じつは「音楽療法」、「アロマ・テラピー」、「園芸療法」などの、いわゆる「代替医療」の一つであり、このような視点に立てば、それらのさまざまな療法は、動物介在療法における研究方法、独立変数と従属変数、得られた成果の分析法などと密接な関係があることになる。
次年度以降の本格的な研究では、このような視点についても十分に考慮しつつ、動物(介在)療法の全面的な展開を図る予定である。

研究成果

• [文献書誌] Ishikawa,S.,Miyazakl,T.& Iwamoto,T.: "Discrimination of redundant auditory stimuli in pigeons."The Japnese Journal of Animal Psychology.. 50. 87-94 (2000)
• [文献書誌] 久能弘道,松本圭,長谷部牧子,岩本隆茂: "三要素からなる時系列刺激の選択的手がかりに基づくハトの条件性見本合わせ学習"動物心理学研究. 50. 221-229 (2000)
• [文献書誌] 高澤加代子,佐々木信一,岩本隆茂: "認知行動療法を利用した治療抵抗への工夫 -行動変容を意識させなかった1例-"日本行動療法学会第26回大会発表論文集. 26. 94-95 (2000)
• [文献書誌] 佐藤理絵,斎藤恵一,中野敬子,岩本隆茂: "人格特性としてのアレキシサイミアに関する研究-情動性イメージと情動反応との関係-"日本行動療法学会第26回大会発表論文集. 26. 150-151 (2000)
• [文献書誌] 大黒大輔,中野敬子,斎藤恵一,岩本隆茂: "老人保健施設における車椅子居住者の短期行動修正による自発的走行の促進"日本行動療法学会第26回大会発表論文集. 26. 198-199 (2000)
• [文献書誌] 佐藤洋一,福井至,岩本隆茂: "論理療法に基づくComputer-Assisted Counselingの実用化研究"日本行動療法学会第26回大会発表論文集. 26. 202-203 (2000)
• [文献書誌] 岩本隆茂(分担執筆): "比較心理学の復権を 岩本隆茂(監訳)『比較心理学を知る』序章(書き下ろし)"ブレーン出版. 3-8 (2000)
• [文献書誌] 岩本隆茂(監訳): "『比較心理学を知る』(Principles of Comparative Psychology)by Hayes,N.Erlbaum(UK),1994."ブレーン出版. 325 (2000)