中学生用に開発した余暇行動関連尺度(余暇概念、余暇退屈度、余暇活動)、ストレス対処尺度、中学生のQOL(生活の質)尺度、中学生の社会的逸脱概念尺度、等を含む調査票を用いて、中学生を対象にして上記の概念の関係を計量学的に分析した。余暇行動は、実際に行っている余暇活動とその余暇活動に対する主観的認知で把握した。また、ストレス対処法に関しては、8因子の典型的なストレス対処因子を23項目で推計した。さらに、逸脱概念は、タバコを吸う、物を盗むなどの具体的な逸脱行動がどの程度の逸脱度として自己認知されているかで推計した。 社会的逸脱概念尺度の総合得点を従属変数と捉え、他の概念をこの総合得点に影響を及ぼす独立変数として扱うと、社会的逸脱概念に対する影響力は生活の質が最も強く(-.184<r<.360^<**>)、ストレス対処(-.073<r<.225^<**>)、余暇概念(.032<r<.209^<**>)、そして余暇行動の順序で影響力は低下していくことが明らかとなった。また注目すべき点は、「目的の明確でない自由時間」が長くなればなるほど、社会的逸脱概念は高くなることが明らかとなった事であった。他の独立変数では、例外なく独立変数に向上が観察されると、社会的逸脱概念の逸脱度は低下する関係が観察された。すなわち、中学生においては、社会的逸脱概念の逸脱度を低下させる為には、何らかの目的を持った時間を構造的に与える事が重要であると考察される。一方、上記の独立変数間の相互作用は強く、特に生活の質のサブスケール(家族関係、友人関係、学業成績)、ストレス対処尺度のサブスケール(心的合理化と自己批判)、及び余暇退屈度の相関は全て1%水準で有意であった。すなわち、これらの概念は複雑な相互関係を持っており、どのようにして、中学生に目的のある自由時間を持たせるかについては今後詳細な研究が必要である。また、放課後の自由時間は積極的に活用されているが、それが必ずしも遊びとして認識されているわけではない事が示唆された。
|