本年度は初年度の研究として、アカデミック・ランキングの実例とこれを成り立たせている理論と方法論に関する既存の調査研究と所見の収集整理を集中的に実施した。調査の場は予定どおり日本およびアメリカ合衆国とし、国内については大学評価・学位授与機構、大学基準協会、日本私立大学協会、日本私立短期大学協会等々、大学評価を検討している機関を訪問して情報収集にあたるとともに、マスメディア、受験産業、評価産業等のランキング情報の収集・分析にあたった。 国外については、ニューヨーク大学、ボストン・カレッジ(国際高等教育研究センター)、ニューイングランド基準協会、全米教育評議会(ACE)、全米研究会議(NRC)、カリフォルニア大学高等教育研究センター等々の評価の専門家から情報を得るとともに、意見を交換した。マスメディアのランキングについては、US News社の担当者から意見を聴取し、日本との比較について討議した。 以上の調査から得られた暫定的所見としては、以下の点が挙げられる。 1.大学の価値を序列化するということに対しては根強い疑念が存在するが、長年にわたるランキングの実施経験と研究蓄積を持つ米国においては、特定の分野にかぎっては主観的・客観的な要素をふくめて価値の測定が可能であるとの仮定を実証する研究がおこなわれ、一定の信頼性を得ている。 2.日米のマスメディアが行っている各種のランキングの多くは、一般的に普及されてはいるが方法論に問題があったり、信憑性に欠けるものもすくなくないが、科学的な方法論にもとづくものもあり、いちがいにその信頼性を否定しがたいものもある。ただしその影響力の大きさを測定し得るデータは現在までのところあきらかではない。
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