1大学評価の一環として大学の組織ないし専門領域の価値判断を序列化して表現する手法(アカデミックランキング)は、マスメデイアや評価機関によって多用されている。しかし、その価値判定の根拠となる理論やデータの信頼性や方法論の適否や前提は、科学的に検証されることなく流布される傾向がある。その結果は無批判的に利用され、社会的にも大きな影響を及ぼしていることは、国際的に共通の現象である。 2ランキングによる大学評価は、競争原理にもとづいて大学の価値を比較し、序列化して他者に明示する評価手法であるから、現在の競争社会にはきわめて明確かつ便利であり、多様な水準の大学を前提とする米国のみならず、基本的には等価の大学を前提とする欧州においてすらひろく普及している。 3ランキングによる評価方法は、これを正当化する理論的根拠や経験データにもとづく科学的に確立された手法による科学的評価法と、これらの理論や方法論を援用して、科学的な様式は整えてはいるが、究極的には商業的目的に活用しようとする、マスメデイアや格付機関によっておこなわれる市場ランキングとを区別する必要がある。両者はともに大学関係者に多大の影響を及ぼしているが、学生や消費者への影響力については、まだ信頼に足りる調査分析は存在しない。 4.競争的資金の配分や威信の序列化を重視する政策的傾向において大学評価が頻繁に行われるようになれば、種々の批判や疑問も多く提出されるようになり、ランキングの理論的正当性や方法論の当否をめぐって、学問的な吟味に耐えうる本格的な分析・評価が緊要な研究課題となろう。国際社会における大学の位置や競争力をつよく求められている日本においても、緊急課題として本格的な組織的研究がおこなわれるべきである。
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