近年、民俗芸能(Folk Performing Arts)は学術的な価値のみならず、人々が広く共有しつつある地域文化に対する関心を満足させる材料として、もしくは地域社会が地域のアイデンティティを再構成するための文化的なシンボルとして、社会的な価値を付与されることが少なくない。研究代表者はこうした状況を促進する民俗芸能行政の理念と実際を検討するため、日本において既に文化財保護法やおまつり法に関係している省庁のみならず、おまつり法にもとづいたイベントを推進する支援事業実施機関として1992年末に設立された地域伝統芸能活用センターの関係者に対してもインタヴューを行なっている。また近年は、マーシャル諸島においても民俗芸能の現代的な位相に関する現地調査を開始している。本研究はこうした成果に立脚しながら、日本とマーシャル諸島において各省庁や地方公共団体が推進している民俗芸能行政の理念と実際について2つの具体的な研究目的を設定して、比較交流史的な視座をも導入しながら参与観察と資料収集による現地調査を3年間行なうものである。 平成13年度の研究実績は諸般の事情によって国内調査に限定した。実際は兵庫県加西市の日吉神社の七社立会神事、福井県三方郡美浜町の弥美神社の祭礼と芸能、岩手県北上市の鬼剣舞と鬼の館、福井県三方郡美浜町の和太鼓、三重県四日市市の諏訪太鼓とおどりフェスタ、富山県砺波市等の獅子舞、奈良県奈良市の春日大社の田楽と細男、福井県遠敷郡上中町の地域づくりプロジェクトをとりあけながら、(1)民俗芸能大会や民俗芸能を舞台化する各種イベント、(2)博物館および関連施設における民俗芸能展示について、詳細な文献調査と現地調査を行なった。そして、上記した地域において、現代社会における民俗芸能の再創造を知らせる過程の実際を知ることができた。
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