研究概要 |
愛媛県において、大正末までに設立された幼稚園の数は18である。地域別に見ると、東予地域3園、中予地域8園、南予地域7園である。中予・南予地域に多く設立され、東予地域はそれに比較すると少なかったことがわかる。ただ、東予地域は量的には劣るものの、3園のうち2園が仏教系の幼稚園で占められ、愛媛の仏教系幼稚園の先駆となっている点は注目される。この2園(伊予三島・今治)については、距離的には離れてはいるものの,設立にあたっては何らかの情報交換があったと思われる。あと南予地域では、7園のうちの3園がキリスト教系の幼稚園で、県都のある中予地域(2園)よりも多く設立されていたことが、際だった特徴となっている。 設立団体別でみると、公立4園、私立14園と圧倒的に私立幼稚園が多い。愛媛の幼児教育が民間によって支えられていた事実を知ることができる。また、公立の幼稚園が4園ということから、当時の県内行政機関の幼児教育政策への関心の程度も判定できる。 私立幼稚園の内訳は、宗教に関係のない個人立7園、仏教系2園、キリスト教系5園で、宗教系幼稚園の占める割合が大きい。特にキリスト教系幼稚園は大正期に入り類増し、県内幼稚園の普及・拡大に貢献している。なかでも、南予地域の卯之町幼稚園の設立に関わった清水伴三郎、村井幼稚園の設立に関わった村井保固、両名とも敬虔なクリスチャンであるが、かれらの貢献には特筆すべきものがある。全国的にそうであったように、愛媛においても民間の熱意と奉仕がなければ、幼稚園の設立そして普及は覚束なかったという実態が確認できる。
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