研究課題/領域番号 |
12871053
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
水之江 有一 千葉大学, 文学部, 教授 (90009598)
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研究分担者 |
水之江 郁子 共立女子大学, 国際学部, 教授 (40229711)
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キーワード | アイルランド蜂起 / シェリー / トマス・デイヴィス / 週刊誌「国家」 / エドワード・ダウデン / アイルランド文芸復興 / ポテト飢饉 / ポストコロニアル文学 |
研究概要 |
研究代表者は、4月ケンブリッジ大学、7月オクスフォード大学を訪問、現地の研究者たちと面談し、研究情報を入手、意見交換をはかった。5月桂冠詩人Andrew Motion来日の折は、ダブリンへ渡りアイルランド蜂起を唱えたShelleyを始め、ロマン派詩人、ヴィクトリア朝詩人を論じ合い、19世紀イギリスの文学動向への理解を深めた。 英国滞在中には、必ず電話でダブリンと連絡を取り、Brendan Kennelly教授から研究への助言を受けた。特にトリニティ卒業生Thomas Davis編纂のThe Nationによってアイルランド解放を目指したロマン主義的ナショナリズム及びその文学的意義を解明しようとする試みは評価されている。 また、ダブリンにおける典型的ヴィクトリアンであったトリニティの教授Edward Dowdenは、The Nation的動きの対極に位置する。'Anglo-Irish'であることを誇りとし、信仰への懐疑、同時代大陸文化への関心などを示した。彼は、やがてアイルランド文芸復興運動に強く反発し、W.B.Yeatsに対立する。 以上の流れを論文にまとめる予定であったが、12月24日死去のため、未完に終わった。 分担者の研究は、以下の視点からなる。 ヴィクトリア朝イギリスの国力増大が進行する過程で、アイルランドのポテト飢饉が発生した。イギリスは、その僅かな収穫を自国へ輸入し、アイルランドを見捨てたという。全人口の約3分の1しか国内に生き残れなかったとも言われる飢饉が残したトラウマは、最近のポストコロニアル文学・文化研究のなかで掘り起こされつつあるが、当時のイギリスの政治・社会状況と対比して考察をする。 一方、その際祖国を離れざるを得なかった人々に焦点をあてるカナダのアイルランド系作家たち、Jane Urquhart や Wayne Johnstonも注目に値する。8月にトロントにてJohnstonにインタヴューを行った。成果は国際アイルランド文学会で発表の予定である。
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