意識や思考など脳の高次機能に対する関心の高まりを背景に、国内外で言語の脳内処理に関する多くの関連プロジェクト(「言語の脳科学」)が計画されている。ほとんどのプロジェクトで、文法獲得の神経心理学的・神経生理学的基盤の解明は重要課題の一つに挙げられているが、その最大の問題点は文法獲得に関連して得られた神経心理学的・神経生理学的資料をどのように解釈するかの理論が築かれていないという点にある。本研究は、文法獲得理論研究の成果にもとづき、幼児および成人の言語脳内処理を調査するための言語学的・認知心理学的基盤を固めることによって、そのような解釈理論を築こうとするものである。 以下、今年度の成果をまとめる。 1 文法獲得理論研究のこれまでの成果を文法理論の観点から整理した。それにより、興味深い成果が期待できる文法現象とそれに関連する有用な刺激文を明らかにできた。 2 言語発達における脳内処理の研究のこれまでの成果を文法理論および神経心理学理論の観点から整理した。とくに、機能MRIなど非侵襲的方法による研究に焦点をあてた。 来年度の課題はつぎのとおりである。 3 1・2の成果をもとに、文法獲得に関連して得られた神経心理学的・神経生理学的資料をどのように解釈するかの理論の構築し、その理論の検証を行う。
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