1.ドッペルゲンガー研究史 (1)文化史 ランクをはじめとする基本文献により、双子、片割れといった神話的二元が魔、悪を為す者として現れるのが、フロイトに至って無意識のなかに抑圧された自己、第二の自己という心理学的に読み解かれるようになった経過をたどった。この概観の際、文明の起源と帰される双子のイメージに特に注目したい。歴史の記述の二重化、表象の抱える根元的問題として今後扱うつもりである。 (2)フロイト以降、精神分析、認知心理学 鏡像中の分身としての自己把握。鏡像の表象史をマニエリズム以降に追い、実在の問題をミメシスとファンタジアの表象作用のなかで考察する。 2.投影、空間装置としての映画 (1)スクリーン 投影という精神機構は映画装置とどう関わるのか。コプチェクの不安と欲望概念を恐怖映画(怪物という分身、断片化された身体)と絡めて考察したい。 (2)遠近法 写真と映画の決定的な違いとしての奥行きという運動。それを認識の空間と捉えればモノの提示形式としての遠近法の20世紀的なあり方を検証することができよう。消失点のanimate(パノフスキー)する表象。 3.ピュグマリオン神話 (1)モノの表象 このモチーフをモノから人間への変化と捉える。それは映画というメディアの働きに他ならない。映画作品の内容にこのモチーフを見て自己言及とするだけでなく、スクリーンの表層に提示されたモノの認識作用による意味変容を解き明かしたい。 (2)大理石像 ノイマンによると18世紀近代に決定的性格付けを受けたこの神話の、19世紀に於ける特徴は表象することの意識化であるとする。コンディヤックの大理石像はアイヒェンドルフでは人工美の表象となる。
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