研究概要 |
1.インド伝統医学の古典的文献のうち、医学全書としての性格をもつ『チャラカ・サンヒター』(紀元後6世紀頃成立)、『スシュルタ・サンヒター』(紀元後6〜7世紀頃成立)、『アシュターンガフリダヤ・サンヒター』(紀元後8世紀頃成立)、『アシュターンガ・サングラハ』、『ベーラ・サンヒター』といった基本文献の、既にインド国内で出版されているテキストを出来る限り収集した。 2.これら基本文献のうち、『チャラカ・サンヒター』、『スシュルタ・サンヒター』、『ベーラ・サンヒター』のテキスト全文をパーソナルコンピューターを用いて入力し、テキストデータベースを構築した。 3.所在が確認されている『ベーラ・サンヒター』の手書き写本とその転写写本のすべてのマイクロフィルムを入手し、それらを用いて校訂テキスト作成の作業を進めた。その一部を"Bhelasamhita,Sarirasthana Chapters 2-3."(『インド思想史研究』12pp.83-93)として発表した。 4.インド伝統医学の治療実践に関して、文献から得られる情報を補うために、Aroor Ravi Memorial Ayurvedic Research Center(インド共和国、カルナータカ州コッパ)と共同で、特定の疾病に対する診察・診断・治療の実態についての記録を収集するための準備的作業を行った。このための現地調査と今後の研究の展望について、「インド伝統医学の保存と再評価へ向けて」(『京都学園大学経営学部論集』第10巻第3号pp.165-174)として発表した。 5.インド伝統医学の疾病概念と疾病分類に関して、インド伝統医学特有の医学理論を踏まえて、その特徴の一端を明らかにした。また、中国伝統医学の疾病概念および疾病分類との比較研究を行い、その成果の一部を、「伝統医学における疾病分類について-中国とインド-」として日本科学史学会第47回年会(2000年5月21日桃山学院大学)において京都大学人文科学研究所東郷俊宏助手と共同で口頭発表を行った。
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