中国における三島由紀夫文学の翻訳・出版は、一九七〇年三島由紀夫自死の出来事を境目にして作品数・版が徐々に増え、現在、川端康成と並んで出版量において日本現代文学の代表者となっていると言ってよい。単に作品訳版量から見て、欧米を遥かに凌ぎ、中国語圏という意味で台湾をも加えれば、世界最大の受容地域となっている。三島由紀夫文学は現代中国とイデオロギー的なギャップなどがあるだけに、中国の研究分野にとって謎の部分が多く、かつ少数の一流の研究者によって研究されてきた。日本の一作家のために一冊の専門的な研究書をまとめることは珍しいことだが、三島由紀夫のためには、現時点ですでに二冊も上梓されている。研究事情の詳細は筆者論文「中国と台湾における三島由紀夫文学の受容」、松本徹氏ら編『三島由紀夫事典』勉誠出版二〇〇〇年十一月(pp.673-679)をご参考。
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