(1)昨年12月に2週間程度、訪台し、戦後の台湾における法発展に関する資料収集(台湾大学法律学院)、研究者との討論などを行った。とくに第4回東アジア行政法学会(テーマ:行政処罰)および海峡両岸行政法シンポジウム(テーマ:行政訴訟、行政不服審査制度)に参加し、行政法分野での近時の制度改革、運用状況について理解を深めた。また、台北市の訴願委員会を訪問し、実際の事件審理を傍聴するなど、実務の状況の把握に務めた。台湾では世界中の制度の比較法的研究の成果を充分に取り入れて、南京で成立した30年代法体制が、すっかり様変わりしようとしていることが確認された。その際、学者が改革の中心的役割を果たしており、そのため大胆な制度改革が可能となっていることが分かった。 (2)研究成果の中間的なまとめを以下のように行った。まず、「現代台湾における法の本土化」(北大法学論集51巻4号、2000年11月)を公表した。これは1999年12月に北海道大学で行われたシンポジウムの記録という形をとっているが、実質的には2000年度の研究成果を盛り込んで、台湾法がとくに民法や司法制度面で南京・中華民国法からの転換を遂げつつあることを論じたものである。ついで、本年3月に北海道大学で開かれた国際ワークショップ「東アジアにおける法の21世紀的課題」では「試論・東アジア法系の成立可能性」という題する報告を行った。台湾における日本殖民地下での西洋法継受の経験を、東アジア全体の中で相対化して評価する視点を打ち出した。台湾法研究の射程が以外に広い範囲に及ぶものであることを実証しようと試みた。
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