中国は現在石油純輸入国であり、2000年に約7000万トン輸入している。計画経済時代から中国は一貫して原油価格を低く押さえてきたが、1995年前後から需給圧力から原油の価格水準が大幅引き上げられざるをえなくなった。1998年中国政府が発表した「原油・製品油価格改革法案」では石油の価格は国際価格と完全にリンクするようになった。現在中国の原油の国際比価は逆転しており、大口密輸商品になってしまった。 一方、中国の国民1人あたりの石油消費量は全世界平均の6分の1に過ぎず、対韓国比で10分の1、対日本比で20分の1、対米国比では30分の1である(1990年)。しかし中国の人口は韓国の約15倍、日本の10倍、米国の5倍もあるので、仮に中国のエネルギー消費量は韓国の水準に到達すれば、中国全体の消費量は米国の2倍に膨れ上がるだろう。中国で猛烈なスピードで進行しているモータリゼーションはそれをさらに加速させるだろう。 近年カスピ海の石油開発をめぐって、米・欧・ロ・日・中諸国は激しい競争が繰り広げられている。中国はアゼルバイジャンで日米に負かされたが、隣のカザフスタンの開発権を勝ち取った。米国は黒海から中国までのパイプライン建設の計画を立てて、かつてのシルクロードがオイルロードとして復活すると主張している。 中国の石油輸入の大部分は中東に依存しているため、マラカ海峡や南沙諸島、ベトナム沿岸、台湾海峡を通る世界有数の海運ルート(シーレーン)は石油輸入と工業製品輸出の重要な通商ルートになっている。いま南沙諸島の領有権をめぐって、中国・ベトナム・フィリピンなど6つの国々が対立しており、それが海軍力の増強を軸とするアジア諸国間の軍備競争に発展している。大陸国家・中国もついに「海洋権益」を守ると主張するようになった。中国のエネルギー問題はアジアと世界の安全保障にも大きな影響を与えている。
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