研究概要 |
裁量的な発生項目を定量的に析出しようとする試みはJones[1991]以来多くの研究でなされてきたが、会計数値の時系列特性を考慮していない。本研究では、とくにキャッシュフロー、会計利益および発生項目における時系列関係に着目し、これまでの米国等での研究にない斬新なモデルを開発した。 Dechow[1994]は、発生項目がキャッシュフロー変化における負の時系列相関を大きく緩和することを統計的に発見している。これは、実現主義による売上計上および対応原則による費用計上が発生項目を通じてなされることがその中心的な原因である。さらに、Dechow,Kothari,Watts[1998]はDechowの発見をモデルによって理論的に説明している。本研究はDechow,Kothari,Wattsのアイデアを展開することによって、特に、キャッシュフローと発生項目の時系列関係に基づいたモデル構築を試みた。 そのテスト結果がきわめてよかったので、論文"Discretionary Accrual Models and the Accounting Process(裁量発生項目モデルと会計プロセス)"にまとめた。この論文は、平成12年10月23日、第12回アジア・太平洋国際会計学術会議・北京会議において、バーノン・ジマーマン優秀論文賞(The Vernon Zimmerman Best Paper Awards)を受賞した。また、この論文は、Kobe Economic and Business Reviewに査読をへて受理された。次号に掲載される。 次年度以降は、開発したモデルを裁量的な会計行動に関連する各種の具体的問題に適用し、モデルの頑健性を検討する。
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