研究概要 |
本研究では、とくにキャッシュフロー、会計利益および発生項目における関係に着目し、これまでの米国等での研究にない斬新なモデルを開発することを目的としている。本年は発生項目を組み込んだ新しい株価評価モデルを開発した。 Dechow[1994]は、発生項目がキャッシュフロー変化における負の時系列相関を大きく緩和することを統計的に発見している。これは、実現主義による売上計上および対応原則による費用計上が発生項目を通じてなされることがその中心的な原因である。さらに、Dechow, Kothari, Watts[1998]はこの発見をモデノルによって理論的に説明している。本研究はこれらのアイデアを展開することによって、特に、キャッシュフローと発生項目の関係に基づいたモデル構築を試みた。昨年度は、論文"Discretionary Accrual Models and the Accounting Process(裁量発生項目モデルと会計プロセス)"にまとめ、平成12年10月23日、第12回アジア・太平洋国際会計学術会議・北京会議において、バーノン・ジマーマン優秀論文賞(The Vernon Zimmerman Best Paper Awards)を受賞した。 本年度は、このアイデアを発展させ、論文"The Role of Accruals on the Market Valuation of Stocks(株式市場評価における発生項目の機能)"にまとめ、第9回日本ファイナンス学会(早稲田大学)やいくつかのワークショップで報告した。 次年度は、モデルの精緻化を進め、これを利益管理に関連する具体的問題に適用する。
|