1998年に発表したベルギー・ルーベン大学のデネフ氏との共同研究の完成により、概均質ベクトル空間研究は新しい発展の段階に入った.すなわち概均質ベクトル空間の分類理論に取り組むことが、現実の可能性として現れてきたのである.概均質ベクトル空間の分類については1977年の佐藤・木村の仕事以来、おもに木村達雄氏により研究されてきたが、研究が進むにつれて問題の困難が認識され「完全な解決」は諦められていたようである.この研究については、まだまだ完成までの道のりは長い.現在の最大の目標は理論の全貌を予想として定式化することである.いままでの研究では、概均質ベクトル空間の分類理論が、代数多様体の分類理論(極小モデル理論)と似ていることが、わかり始めている.特に「裏返し変換」と「縮約」という変換が、私の分類理論において重要な意味を持ち始めている.また極小モデルにあたる概念が、概均質ベクトル空間の理論の側では、「対数的自由な概均質ベクトル空間」であると考えれば良いという点については、確立できたと信じている.したがって「分類理論の全貌を予想として定式化する」ために、今の時点で欠けているのは「フリップ」にあたる概念である.「フリップ」にあたる変換を捜し求めるための試みとして、概均質ベクトル空間のクルスターマン層というものを導入し、それに付随した射影直線上のエル進層の分岐を詳細に研究し、それが無限遠点で野生的分岐を持ち、ゼロでは従順な分岐を持ち、それのモノドロミーとして、指数的b関数が現れることなど、この点に関しては、徹底した結果が得られた.
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