研究概要 |
フィンランド・ツルク大学物理学教室教授Jarmo Hietarinta氏を東京工業大学に招き「Vortices and knots in the Faddeev-Skyrme model」(Faddeev-Skyrme模型における渦と結び目)と題した講演を行った. その要旨は以下のようである. 時間によって変化する3次元球面内の単位ベクトル場を考える.ベクトルの方向を1つ指定することにより3次元球面内の曲面が決まるが,特にこれがトーラスの場合,3次元球面内の結び目であるとみなすことができる.一方単位ベクトル場に対してはFaddeev-Skyrmeエネルギーが定義でき,初期値として設定したベクトル場の持つエネルギーを小さくするように変形することにより,ベクトル場と先に固定した方向とにより決まる結び目も変形する.初期条件や単位ベクトル場の定義するホップ不変量(3次元球面内の単位ベクトル場は3次元球面から2次元球面への写像とみなせることに注意)を様々に取ることにより,Hietarinta氏はP.Salo氏と共同で,三葉結び目と呼ばれる最も単純な非自明結び目が現れることをコンピュータ実験で観察した.この講演ではビデオを使って上述の変形を示すなど視覚的にもわかりやすいものであった. 講演の後共同研究者の筧氏を交えて討論を行い,この現象に関して数学的・理論的なアプローチが可能であるとの確信を得た.今後は,我々の持つ可積分系および結び目理論の知識を駆使して,コンピュータ実験を交えて独自の研究を始めたい.
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