研究概要 |
量子オラクルの概念の基礎付けのために,実効的に計算可能な量子オラクルをもつオラクル量子Turing機械を,オラクルを持たない量子Turing機械で模倣することができるかという問題を研究した.この問題に対しては,Bennett,Bernstein,Brassardたちの結果とAharonov,Kitaev,Nisanたちによる結果が知られているが,前者は,オラクルが決定的関数であり,クエリー状態に決定的に遷移することが仮定されており,後者は,オラクルが確率的関数であることが仮定されている.本研究では,オラクルが一般のユニタリ変換を実行するという仮定と,クエリー状態と非クエリー状態の重ね合わせに遷移することも許すという仮定の下で,完全に一般的にこの問題を研究した.その結果,次の研究成果をえた. 1. 任意のk次モニック多項式p(x)に対して,p(x)ステップの遅延を引き起こす量子Turing機械が存在することを証明した. 2. 量子Turing機械Mで多項式時間に計算可能なユニタリ変換Uに対して,MにオラクルUを付随させたオラクル量子Turing機械をある多項式p(x)の遅延で模倣する多項式時間量子Turing機械が構成できることを証明した. 3. 上の結果を応用して,EQP,BQP,ZQPのロパスト性を完全に一般的な仮定の下で証明した.
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