1.リスク鋭感的確率制御の数理ファイナンスへの応用として、線形ガウス型ファクターモデルに対するポートフォリオ最適化問題で時間無限範囲の場合を考察した。ポートフォリオの選択にあたって、ファクターと証券価格の過去の情報を使う完全情報の場合の問題と、証券価格の過去の情報のみを用いる部分情報の場合のそれぞれの場合について、最適戦略を明示的に構成する結果を得た。完全情報の場合には、有限時間範囲の場合に対応するベルマン方程式の解が行列値リッカチ型常微分方程式、ベクトル値線形常微分方程式、および、線形常微分方程式の解を用いて明示的に表されることを示し、さらに、その解の時間大域的挙動を考察することにより、エルゴード型ベルマン方程式の解を得た。その解を用いて時間無限範囲の場合の最適戦略を明示的に構成できることを示した。しかしながら、その際、同時にその解が無条件に最適戦略を構成するわけではないことを示した。 2.部分情報の場合には、フィルターの問題が介在するので問題はより複雑になる。有限時間範囲の場合には、最適戦略がフィルターの満たす一行列リッカチ方程式と条件付平均の満たす確率微分方程式の解を用いて、評価関数を書きなおすことにより、問題を時間的非様な拡散過程の確率制御問題と見直す事により、上記3つの常微分方程式を導き、それらを用いて最適戦略が構成されることを前年度の研究で得ていた。その結果を時間無限範囲の場合の考察に用い、まず、フィルターの満たすリッカチ方程式の解の時間大域的挙動を調べた。その結果をもちいて、もう1つのリッカチ方程式の時間大域的挙動を考察した。この際係数が時間に依存するため旧来の手法が使えないが、新たに、比較定理を用いる手法を導入し、極限方程式を導くことに成功した。そして、その極限方程式の解を用いて無限時間範囲の場合の最適戦略を構成した。
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