研究概要 |
代表者と木村忠信氏が得た正六角形対流パターンは,熱平衡状態にランダムな摂動を加えたものを初期値として発展方程式を数値シミュレーションすることによって自己組織的に得られ,長時間に渡ってほぼ一定の形状を保ち続けるものである.得られた正六角形対流パターンが安定であることを示唆するこのような数値的根拠はあるものの,その一方で,発展方程式の数値シミュレーションをさらに継続すると,パターンの等方性がゆっくりと崩れ,しだいに横長の構造が顕著になることも事実である. このような状況を受けて,分担者の西田孝明は熱平衡解からの分岐現象を研究し,水平方向の周期の比を1:√<3>に設定し,レイリー数を分岐パラメータとするときに興味深い現象が現れることを示した.臨界レイリー数においては余次元2の分岐が起こり,ロール型の対流パターンと長方形型の対流パターンに対応する関数が固有空間を張ること,正六角形状の対流パターンはロール型と長方形型の対流パターンの線形結合によって実現されることが示された.さらに,定常解がなす空間において,おのおのの対流パターンに対応する分岐曲線をニュートン法を利用して追跡し,正六角形状の対流パターンは,分岐の直後では不安定であるが,長方形型の対流パターンから2次分岐した安定解の枝と結合したあとは安定になることを示した. 上記の数理解析結果を受けて,代表者は田村則和氏とともに,ブジネ近似された熱対流方程式系の数値シミュレーションによる確認作業を行った.その結果,正六角形状の対流パターンに対して,ある特殊な方向に小さな摂動を与えることによって分岐直後の正六角形パターンの不安定性を確認した.さらに,長方形型のパターンから2次分岐した解の枝との結合以降の正六角形パターンの安定性確認を試みた.
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