研究概要 |
本研究課題では,おもに等質シーゲル領域上の調和解析を,そこに単純推移的に作用する分裂可解り一群を通しで研究した.とくに,ベレジン変換の研究及びそれに伴うジーゲル領域の幾何学的な性質を追究した.そこでは,ジーゲル領域を有界領域に写す,双有理的かつ双正則なCayley変換の計量幾何学的な性質が,解析学に大きく影響を及ぼしていることわかってきた.このCayley変換は,数年前にPenneyが導入したものとよく似たもので,実際対称領域ならば定数倍しか違わない.まずこのCayley変換の性質について詳しく調べて,その成果を学術論文として発表した(J.Lie Theory,11).このCayley変換を用いて,等質ジーゲル領域の中で対祢ジーゲル領域を特徴づける一つの定理を得た.それはジーゲル領域のCayley像である有界領域の方で書き表すと,0を原点とするとき,g・0とg^{-1}・0のノルムが等しいという条件となる.この結果も学術論文としてまとめ,学術雑誌Transformation Groupsに受理されており,今秋以降に出版されることになっている.さらに,この対称ジーゲル領域の特徴付けを使って,ベレジン変換とラブラス・ベルトラミ作用素が可換となるための必要十分条件は領域が対称となることであるという決定的な結果を得た.これも学術論文としてまとめあげ,学術雑誌Diff.Geom.Appl.に受理され,出版されることが決まっている.ポワソン・セゲー核についても現在研究が進行中で,平成13年度中に一定の成果が出るものと思っている. 一方研究分担者の伊師英之は,等質錐上の解析学の研究を,やはりそこに単純推移的に働く分裂可解り一群の作用を通して研究しな.基本相対不変式に関する成果を学術論文としてまとめて,出版している.これは,GindikinやVinbergによって得られていた結果をこれ以上の改良の余地をなくするするものである.伊師の仕事はさらに,等質ジーゲル領域上の行列式型微分作用素の研究へとつながり,これも成果をあげて,論文がJ.Funct.Anal.に受理されて,出版が決まっている.分担者梅田亨の不変微分作用素の代数的研究も,本研究課題の重要な成果である.
|