研究課題/領域番号 |
12874023
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松井 卓 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (50199733)
|
研究分担者 |
綿谷 安男 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (00175077)
|
キーワード | 関数解析 / 数理物理 / リュエル作用素 / 量子スピン系 / 中心極限定理 / 相関関数 / 指数的減衰 |
研究概要 |
エルゴード理論におけるリュエル・ペロン・フロベニウス作用素(以下リュエル作用素と呼ぶ)の手法を1次元量子スピン系へ拡張することを研究した。リュエル作用素の主な応用として2点相関関数の指数的減衰の証明、中心極限定理がありこれらを量子スピン系で証明するための新しい方法論を目指した。古典系では長距離相互作用のギッブス測度を考えるが、この研究では考える状態として、ギッブス状態のみならず、1次元ハミルトニアンの基底状態も念頭においている。 リュエル作用素自体は非可換化する方法が、系の非可換性のため一意的でないので2つの方向で考えた。ひとつは、作用素の形が可換の場合と同じで漸近的に同等の性質が成立する場合。 もう一つは双対性の条件をみたす場合。前者を漸近的リュエル作用素、後者を双対的リュエル作用素と呼ぶことにする。これら2つのタイプのリュエル作用素についてスペクトルギャップがあらわれる条件を研究した。 双対的リュエル作用素については抽象的存在定理があるが、この研究では1次元量子スピン系の並進不変状態の場合に別の構成を行った。我々の構成法を使うとpure finitely correlated statesでは、双対的リュエル作用素がスペクトルギャップを持つことが明らかになり、その応用として2点相関関数のの指数的減少は、observableごとに成立するだけでなく一様性があることが分かった。 一方、漸近的リュエル作用素については荒木不二洋の有限有効距離のハミルトニアンのギッブス状態の場合の先行研究がある。この先行研究では、古典系ではあらわれないある縮小条件が使われている。我々は、荒木の縮小条件のもとで、より一般のリュエル作用素でスペクトルギャップがあらわれることを証明した。さらに荒木の縮小条件は、リュエル作用素の弱位相での収束条件と同値であることも証明した。 混合性のある非可換系での中心極限定理は、今後の課題である。この研究により1次元系では古典型と同様に中心極限定理を証明できると期待している。
|