本研究の主なテーマは、超離散化の手法を用いて非線形離散問題に対する微分方程式の解析手法の適用可能性を考察することと、逆超離散化法の開発により、離散系の解から対応する偏微分方程式の解の構造を説明することの二つである。この目的に対して本年度の研究経過は以下の通りである。 基本的セルオートマトンと呼ばれる離散力学系に対して、逆超離散化の手法を適用し、対応する非線形差分方程式を導いた。その差分方程式は結合型であるのが特徴で、一つの変数はフィルターの役割を果たしている。得られた差分方程式に対して数値計算を行うと、たとえばルール90の場合、もとのセルオートマトンで見られるフラクタルパターンが安定に再現される。結合的でない場合にはフラクタルパターンは時間とともに消失するが、フィルターがその構造を保持する役割を果たしている。 本研究では基本的セルオートマトンすべてについて、その解構造を保存する非線形差分方程式を導き、かつその安定性を数学的に証明した。また得られた差分方程式はある意味で「滑らか」であり、連続化が可能であることを指摘した。今後、対応する偏微分方程式がどのようなものであるかを検討し、反応拡散系など関連する現象とのつながりを調べることが問題となる。また、基本的セルオートマトンだけでなく、流体力学、化学反応系、非線形分散波などで提案されているセルオートマトンに対して、逆超離散化を適用し非線形差分方程式及び対応する非線形偏微分方程式を導出することも次年度の研究テーマである。
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