研究概要 |
1.偏光ビームスプリッターと2つのフォトダイオードを使って、磁気素励起の存在をプローブ光の偏光の変化として光学的に検出する高感度な検出器ポラリメー夕ーを製作した。光学ディレイラインを組んでプローブ光を高精度で遅延させ、パソコンで制御された時間分解能1ピコ秒以下のポンプ・プローブ検出システムを製作した。また、ポンプ光の偏光の向きを光弾性変調器でスイッチし、ロックインアンプを用いた高感度な検出を行うことができるようにした。 2.典型的な反強磁性体であるMnF_2において、マグノンを生成・検出する実験を行った。マグノンサイドバンド(コールドバンド,〜541nm)の選択則を利用したパルスレーザー光による偏光選択励起を行って片方の部分格子のみにマグノンを生成し、プローブ光のファラデー回転としてマグノンを検出することを試みたが、現在のところマグノンの検出信号は得られていない。 3.硫酸マンガン水溶液において、偏光を利用したポンプープローブ法を用いて、マンガンイオンの基底状態の光誘起磁化を生成し、ピコ秒・フェムト秒領域の磁化の減衰を観測した。磁化の方向に磁場を加えると或いは濃度を薄めると緩和時間が長くなることがわかった。この結果は、磁化の減衰がマンガンイオン間の磁気的双極子相互作用によるスピン交差緩和であることを示唆している。 4.さらに、ポンプ光によって生成された磁化と垂直方向に磁場を加えると、ピコ秒領域で振動する量子ビート信号が観測された。これは磁場まわりの磁化の才差運動を検出したものであり、フーリエ変換することによって電子スピン共鳴(ESR)信号が得られる。時間領域におけるこのような高速スピンダイナミックスの直接測定は、純光学的方法によって初めて可能になったものである。
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