平成12年度では、電子線アナライザーとX線源に差圧排気装置を設けることによって、薄膜成長中の真空度の悪い状況下でのX線光電子スペクトル測定が可能な装置を製作した。平成13年度は、酸素中にてMgO基板上にCoO薄膜成長を行い、その成長表面の光電子分光観察を試みた。また、本研究の主目的のひとつであるAl_2O_3基板上に三角格子を持つCo酸化物の成長を試みる準備として、三角格子を持っ層状Co酸化物を光電子分光によって調べた。三角格子上でのCo^<3+>とCo^<4+>の電荷整列の可能性、さらには電荷整列によって誘起される強磁性状態についての研究を行い、その成果を平成13年3月の日本物理学会において発表した。これらの光電子分光のデータを指針として、三角格子を持つ層状Co酸化物薄膜の製作および光電子分光による評価を行う予定であったが、平成13年9月に停電によって真空ポンプが停止して、実験装置が汚染されるという事故が発生した。この事故のために、三角格子を持つ層状Co酸化物薄膜の合成には至らなかった。現在、当装置の汚染を除去し、装置の整備を行っている。平成14年度は当装置の整備・改良を継続して行って、三角格子構造を持つ層状Co酸化物およびその他のCo酸化物薄膜の作成と光電子分光による評価を行う予定である。さらに、光電子分光のデータを指針として薄膜成長条件を制御することによって、新しいCo酸化物薄膜の作成を試みる予定である。
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