研究概要 |
1.量子弾性測定用超高圧試料セルの製作 低温・強磁場中における多重極限下における測定を視野に入れ,非磁性超堅材料(MP35N)を用いて一定加重型ピストンシリンダー超高圧試料セルを製作した。セル作製に従来用いられてきたBeCuでは最高発生圧力が2GPa程度に限られてきたが,この新材料MP25Nを用いると4〜5GPaの発生が可能である。ただし,本研究では単結晶を用いた超音波実験を目指しているため,試料空間を電気抵抗測定などの用いられる通常のピストンシリンダー試料セルより太くする必要がある。このため,最高圧力は減少するが,本研究では低温において最低限3GPaを確保して量子弾性測定を可能にする超高圧セルの作製を行った。実際製作した試料セルは,試料空間(テフロンカプセル内部)の直径φ5を確保する内径φ6の内部シリンダーと内部シリンダーを支える外部シリンダー(外径φ34,全長120mm)から構成される。圧力の印可は,現有の油圧ジャッキで行った。予備実験として,圧力セルを壊さないよう慎重に圧力をかけていった結果,室温において3GPaの印可に成功した。以上により,来年度において低温に到っても3GPaを達成し,従来の超音波測定では到達できなかった超高圧下における量子弾性測定を可能にする基礎を完成した。 2.強相関電子系物質における価数相転移の圧力依存性 本研究では,電子ドープ型酸化物高温超伝導体Nd_<1.85>Ce_<0.15>CuO_4(NCCO)の弾性率測定,超高圧下電気抵抗測定およびYbInCu_4における価数相転移に伴う比熱以上の圧力依存性の測定を行った。この結果,NCCOにおける超伝導転移温度の圧力・歪み依存性には,従来の多結晶からの報告と異なり,LSCOと類似の異方性が存在するがその大きさはLSCOと比較して1桁近く小さいことが分かった。YbInCu_4については,転移エントロピーの圧力依存性測定から,Ybの価数の相対的な変化量が0.9程度に及ぶことが分かった。これは,体積弾性率の異常から見積もられたYb価数の変化量と一致する。
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