以下の高分子について、結晶形態の観察、成長速度、非晶相における分子運動ダイナミクスの測定より、構造形成過程・ガラス転移について考察した。 1.アイソタクチックポリスチレンについては電子顕微鏡観察(EM)、原子間力顕微鏡(AFM)により結晶化条件と成長速度、結晶形態との関係を調べた。薄膜からの結晶化ではEM、AFMより結晶成長速度は薄膜の厚さに逆比例することを示し、膜厚の減少と共に、拡散が支配的なるような結晶形態をとることおよびその結晶化温度依存性を明らかにした。原子間力顕微鏡を応用した白金抵抗型走査熱顕微鏡を用いて、アイソタクチックポリスチレン単結晶、球晶の形態を観察し、微小領域熱分析法により、局所的なガラス転移点、融点の測定を行った。得られたデータの物理的解釈や実験手法の応用についての研究が進行中である。結晶化のカイネティクスを支配する因子の1つである主緩和、ガラス転移と膜厚との関係を非晶質ポリスチレンについて誘電緩和により測定し、誘電損失の周波数依存性により、膜厚の低下とともにプロファイルがブロードになるのがわかった。これに対して等温条件下でのα過程の緩和時間は膜厚194μmから33nmではほとんど差は見られなかったが、14nmでは緩和時間の減少が観測された。これらの結果より、ガラス転移温度が低下するのはα過程の緩和時間の分布が広くなることに対応して生じでいることが示された。 2.アイソタクチックポリプロピレンについて、ガラスからのスメタチック相形成におけるX線散乱実時間測定、熱測定により、一定温度でのスメクチック相形成では一定構造の相が形成されること、スメクチック相形成と共にガラス転移温度が上昇することを明らかにした。
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