本年度は、当初の計画通り、高温高圧条件下における液体試料のX線構造解析用に新装置を試作し、性能評価を行った。 本研究では、超高圧実験に広く用いられるダイヤモンドアンビル装置の試料部近傍に小型ヒーターを設置して高温発生を行う外熱式ダイヤモンドアンビル装置を設計・製作した。試行錯誤の結果、以下に示す方法で1300K程度の高温発生が確認された。数値制御加工機を用いて成形した高熱伝導率の快削性セラミックス(主成分は窒化アルミニウム)にモリブデン線を巻き通電することでジュール熱を発生させた。周囲は低熱伝導率のランタンクロマイトで覆った。ダイヤモンドアンビルの受台には低熱伝導率・高靭性・高強度のジルコニアセラミックスを用いた。装置内は、アルゴン(水素2%)ガス雰囲気に保ち、ダイヤモンドやモリブデン線などの劣化を抑えた。 本研究では、X線回折法を用いて標準試料の熱膨張を測定することで温度を求めた。こうして求めた温度は、従来の熱電対を用いた方法で測定した温度に比べて著しく低いことが分かった。この不一致は、熱電対での測定が装置内の温度分布の影響を強く受け不正確であることに起因すると推測される。X線を用いた測定での1300Kに到達することは極めて困難であったため、これまでの実験は3万気圧程度に留まっている。ようやく高温発生の目処が立ったので、今後は圧力領域の拡大を図る予定である。50万気圧・1300K程度の安定発生を可能にした後、本研究の目的である分子性液体の構造の圧力変化を明らかにしたい。
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