本年度は以下に示したように、研究計画に沿って研究を進めることができた。 ・木星全球を覆う高層大気イオンH^+_3の微弱な発光現象を高い精度で観測するために、専用の赤外線フィルターを設計した。最良の観測効率を得るために中心波長3.417μm、透過波長幅0.017μmとした。すばる望遠鏡のIRCS赤外撮像分光装置に装着するために直径42mmのものを、日本代理店を通じてBarr社(米国マサチューセッツ州)に製作依頼し、2001年1月に製作が完了した。 ・佐藤は、11月中旬、12月中旬、2001年1月初旬、2月初旬と下旬、3月中旬にIRTF望遠鏡(米国ハワイ州)を訪れ、H^+_3イオン発光現象の赤外線観測を実施した(既存のフィルターを使用した)。11月〜12月データの一次処理を完了し、発光現象の経度・緯度依存性を検出した。また、衛星の影に相当する領域において、このイオンの発光強度が減少していることも発見した。このデータは、木星上層大気におけるH^+_3イオンの寿命および上層大気構造に対する重要な情報源となるものであり、次年度には新フィルターにより、同様の現象をさらに高い精度で観測する予定である。 ・過去の観測データを解析し、それに基づいて上層大気構造推定手法を改良したものを、日本天文学会年会において発表した。
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