平成12年度に試験製作した赤外線フィルターの特性を詳細に検討し、中心波長を3.413μm、透過幅を0.017μmに最適化したフィルターを、すばる望遠鏡IRCS装置向け(直径φ42mm)に製作した。新フィルターの冷却状態における特性は、国立天文台の天文機器開発実験センター(東京都三鷹市)にて、FTIR分光装置を用い実測確認した(2001年7月)。2001年12月24日に、同フィルターを装着したすばる望遠鏡IRCS装置(ハワイ島マウナケア山頂)により、木星の赤外線観測を実施し、期待通りの高いSN比を持つ画像データを得ることに成功した。同夜の木星には画面の左側から太陽光が射していたにも関わらず、上層H_3^+イオンの発光は反対の右側リムでより強いことを見出した。これは、上層H_3^+イオンの高度分布だけではなく、その寿命に対して強い制約を与えるデータである。特に後者は、実験室においてもまだ良く決定されていないパラメータであって、本研究により開発している手法がユニークかつ非常に有用であることを実証するものであると考えられる。データの取得が研究期間の終りに近く、論文としての発表はまだであるが、大気圏シンポジウム(2002年3月1日、宇宙科学研究所)および日本天文学会春季年会(同3月30日、茨城大学)において、論文のプレビューを行っている。また、日本が探査計画を進めている金星など、他の惑星にも同様のアプローチの可能性を今後探ってゆきたい。
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