本研究では、原子間力顕微鏡がどのくらい地質学・地球科学の観察に有効であるのかを検証中である。結晶(石英、電気石、ざくろ石、藍閃石)の表面を原子間力顕微鏡で観察すると、やはり一見平らに見えても若干の凹凸があることがわかる。凹凸が結晶内の転位とどのように関係しているのかについてはまだ不明である。 石英を研磨し、そこに超微小硬度計でビッガース圧痕をあけた試料の観察では、圧痕がきちんとしたピラミッド状になっていることを確認した。また、この試料をHF溶液1Nで溶解させる実験を行った。その結果、圧痕内部が外部の平面に比べて著しく溶解されやすいことがわかった。溶解された面は、フランボイダル状になっており、溶解が不規則に進行していることを想像させる。このような研究にも原子間力顕微鏡は強烈な能力を発揮できることがわかった。 有孔虫の殻表面の観察を原子間力顕微鏡で行った。倍率が大きすぎたためか、どのような位置を観察しているのかわからないので、現状では十分有効利用できていないが、今後引き続き同様の検討を行う予定である。また二枚貝の貝殻の裏側の光沢面を観察した。これまで見たことがないような異様な球状の顆粒がたくさんあることがわかった。この貝殻でも有孔虫と同様で、どこを見ているのかわからなくなってしまった。わからなくなった最大の理由は、想像していたものと全く違ったイメージ像が原子間力顕微鏡の観察で得られたからである。通常の走査型電子顕微鏡と原子間力顕微鏡の中間くらいの倍率の顕微鏡(例えばレーザー顕微鏡)で観察し、橋渡しをする必要を感じた。これは来年度への課題である。
|