研究概要 |
本研究の主目的は,比較的低温(150℃〜室温)下での水溶液-鉱物間の反応メカニズムを明らかにする点にある。これまで,熱水条件(200℃以上),及び室温での溶解度実験,氷-岩石反応実験は多くなされてきたが,150℃〜室温条件下での実験がなされてはこなかった。この条件下での研究方法の確立のための研究を行った。反応を速めるために,(1)前駆物質からの鉱物の生成,(2)水溶液混合実験,合成実験を従来ある装置をもとに行った。この他に,(3)新しい装置の開発,(4)天然の硫酸塩鉱物の化学分析を行った。 (1)では,低温では従来合成できなかった黄鉄鉱が,NaFeS_2という前駆物質よりたやすく合成出来ることが判明した。(2)の合成実験は,硫酸塩(石膏,重晶石),炭酸塩の熱水,低温合成,微量元素(ストロンチウムなど)の分配実験を行い,分配係数,鉱物の組織を支配する要因を明らかにした。(1),(2)の研究をもとに,熱水性鉱床をもたらした熱水の性質,鉱床の成因を明らかにした。(3)については,2つのオートクレーブを用いて,高温で熱水を混合させ,鉱物を急速に合成出来る装置を完成させ,鉱物の合成実験を行っている(4)では,低温性硫酸塩(蒸発岩,堆積岩中の石膏),高温性硫酸塩(黒鉱鉱床,海嶺熱水性鉱床)の化学分析を行い,産状により微量元素濃度が異なることが判明した。 この他に,以上の知見をもとに,天然の低温下で生成している硫酸塩(アルノーゲン,石膏)の産状,成因を明らかにした。
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