日本列島における人類、動物等の起源と変容を考えるとき、極氷期における日本列島-大陸間の陸橋形成の有無とその時期に関する情報が非常に重要である。しかし、最終氷期における日本近海の海水準については、研究者間に考え方の大きな開きがあり、-80mから-130mに至るまでまちまちの値が用いられてきた。本研究は、宇宙線が地表物質を貫通して地下に形成する放射性同位体を測定することによって、極氷期の海水準を直接計測する新しい方法を提案するもので、具体的には、海面低下時に生成した^<10>Be、^<14>C、^<26>Al等、半減期の異なる極微量の同位体の痕跡を、現在海底下にある岩石試料中に見出すことにより、その有効性を実証することに当面の目標を置く。 対象の同位体のうち、^<10>Be、^<26>Alについては、東京大学の青木や研究代表者らによる氷河地形の年代測定への応用があり、数グラムの石英試料を用いて表面岩石の測定がなされた。だだし、海底下の試料は表面試料に比し宇宙線起源の同位体生成量は少ないと予想される。そこで、数十グラムの試料を安全に処理するための処理装置を導入した。本研究のスタートが平成12年10月で、装置導入が平成13年2月末となったため、現在は実験の準備段階にある。なお、^<14>Cの測定法の開発を海外共同研究者のK.Kimとともに進めている。 一方、実際の、海底下の試料確保についても調査を進めた。2000年3月には準備研究のため、韓国資源研究所を訪れ、対馬海峡海底試料の可能性について議論を行った。また2001年3月には青函トンネル関連試料について予備調査を行った。
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