年度当初に海外共同研究者のK. Kimを招聘し、研究試料確保の具体案について検討した。現海面下140メートル前後あるいは以下の地点からの試料を含む、深度の異なる複数の試料確保を目指すこととした。当初候補としていた、対馬海峡海底試料の可能性については様々な事情から早期の入手は困難であるとの認識となったため、本年度は青函トンネル関連試料について具体的な調査と試料の確保に当たることとした。 日本鉄道建設公団の協力を得て、青函トンネル建設に関わる各種の事前の地質調査や試験のための岩石採取データを調査した。報告書から、どのような試料がどのような形で採取されているかの情報を得るとともに、それらが現在保管されているかどうかについての情報を得た。その結果、現在、吉岡海底駅となっているトンネル内の保管場所に集中的に、試料が保管されていることを確認した。日本鉄道建設公団のご好意により現地での試料の直接調査を行い、それぞれ採取の水深が異なる6種のボーリングコア等の岩石試料、約9キログラムを得た。青函トンネルの地質構造は、主要部が凝灰岩層となっており、研究で必要とする量の石英試料をこれらから得ることができるかどうかについては微妙であるため、試験的に約30グラムの試料を用い内3点のテストを行った。1点については20%弱の石英が回収できる見通しとなったが、他の2点については石英の粒度が小さく1%以下の回収率であった。現在、K. Kimのもとでそれぞれの試料の石英回収をすすめている段階である。
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