5-ブロモピリミジンにブチルリチウムを作用させてリチオ化し、イソブチルアルデヒドと反応させてラセミ体のピリミジルアルカノールを合成した。ラセミ体のピリミジルアルカノールをエタノールに溶解し円偏光を照射した。このとき溶液フィルタを用いて波長365nm付近の光が透過するように設定した。円偏光による不斉光分解を行い、残ったピリミジルアルカノールにわずかでも不斉が誘起されれば、その後の不斉自己触媒反応によりピリミジルアルカノールの鏡像体過剰率が著しく向上するものと期待した。 室温で3日間ラセミ体に円偏光照射した場合、薄層クロマトグラフィーで分解生成物が確認されたが痕跡量にとどまった。さらに反応時間を長くしても光分解の収率の向上は見られなかった。また、フィルタなしで光源から直接光を照射すると比較的短時間で分解生成物が得られた。つぎに、円偏光を照射する温度を40℃に設定して実験を行ったところ、室温での条件の実験のときよりも光分解速度が増大することを見出した。ラセミ体のピリミジルアルカノールの不斉光分解で残ったピリミジルアルカノールにピリミジンカルバルデヒドとジイソプロピル亜鉛とを順次加えて不斉自己触媒反応を行いピリミジルアルカノールを得た。本研究の芽は得られたものと考えられ、現在、本条件下で円偏光のキラリティーと不斉自己触媒反応により生成するピリミジルアルカノールの不斉との立体相関性の再現性の確認を行っている。
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