研究概要 |
一次元ナノシリカ細孔体MCM-41細孔空間内にアルキル基や機能性官能基による化学修飾を行い,細孔内での分子認識機能の設計,並びに評価を行った。まず,リン酸認識サイトとして知られるチオウロニウム基を機能性官能基として採用した。これを有するシランカップリング剤を新規に合成し,MCM-41(平均細孔径:3.5nm)に修飾した(TU-MCM)。TU-MCMの分子認識機能を評価をするため,生体系で重要な役割を担うアデノシン誘導体(AXP:AMP,ADP,ATP)の吸着実験を行った。TU-MCMとAXP水溶液を振とう後,AXPの吸着率を算出した結果,ATPの場合に吸着率が最大となった。一方,未修飾のMCM-41についても同様の実験を行ったが,TU-MCMにおいて吸着量が最大であったATPでも吸着は見られなかった。この結果から,チオウロニウム基がリン酸部位と錯形成し,よりリン酸の数(n)が多いε-ATPを選択的に認識していることが示された。これは,リン酸の数の増加によって水素結合が増加したことによると考えられる。今後,さらに核酸塩基認識部位を有する分子を修飾することにより,多点認識によって選択性を向上させた一斉分析システムを創製する。
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