<実験> 本年度は保有するアズキゾウムシの実験個体群10系統を用い、交雑実験を行った。世界中から集められた10系統のうち、50年以上実験室で飼われているjC系統を軸に、残り9種類(雄雌を入れ換えた分も考慮すると18種類)の掛け合わせを行い、発育日数、総産卵数、孵化率を計測した。その結果、heterosisになるもの、およびoutbreeding depressionになるものが各1系統ずつ発見され、残り7系統は、すべて掛け合わせによるこれら3形質への影響は検出できなかった。来年度はこの結果に基づき、遺伝的効果の現われた2系統とjC系統の掛け合わせを行い、heterosisとoutbreeding depressionの両面から、遺伝的多様性が寄主-寄生蜂群集の安定性にもたらす影響を考えて行く。 <理論> 古典的なNicholson-Baileyの寄主-寄生蜂モデルに、寄主の方だけに単純な遺伝機構を導入し、さらに寄生蜂の攻撃能力が寄主の遺伝子型で左右されるようなモデルを構築したところ、寄主-寄生蜂系が安定するパラメタ領域が増加する傾向が見られた。来年度は時間的不均一性も導入するために、individual-based modelの構築を行う。 <成果> 実験結果、および理論モデルの成果を第48回生態学会で発表するとともに、現在投稿準備中である。
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